せんせいリレー

「せんせいリレー」では月に一度、せんせいたちが順番で、日々の園生活のなかで見たり聞いたり感じたりしたことを、みなさんにお伝えします。

ト次の走者は私、園長の丸山キヨミです。「芝居電話を通して」 2006年6月

 新年度がスタートして2ヶ月余り。
毎年のことながら、新入児にとっては両親のもとを離れての社会への第一歩!
少しずつ慣れてはきたものの、にこにこ顔さん、不安顔さん、半べそ顔さん、大泣き顔さんと、さまざまな顔でクラスの中は大にぎわいです。保育が始まっていても、廊下には補助の先生を囲んで“白雪姫と七人のこびと”のように泣き続けている子もいます。その様子を園長である私も現場に出てみています。

そんな大泣きさんたちですが「お帰りの支度をする時間ですよ〜」の呼びかけをすると、泣くのを止めて支度を始めます。朝の顔と帰りの顔ががらりと変化していきます。

ある日、大泣きをしていた3歳児のA君がいました。

私「お家にお電話して、お母さんにお迎えに来てってお願いしてみようか?」
A君は泣きじゃくりながら、
A君「うん、電話して…」
そこで一緒に職員室へ行くことにしました。

お母さんの声を聞くとA君はもっと泣いてしまうだろうと思った私は、「園長先生がかけてみるよ」と受話器だけをとり、電話をしている芝居をすることにしました。
私「A君のお母さんですか?A君がお母さんに会いたいと泣いています。必ず迎えに来てくださいね」と。

私「A君、A君が泣かないで先生のお話を聞けたら、お母さんお迎えに来てくれるって」
それを聞いて安心したA君は、
A君「うん。お母さんは何をしてた?」
私「お洗たくをしてたんだって」
A君「お洗たく…?」
A君はすっかり泣きやみ、会話をしながら一緒にクラスへ戻りました。

その後3日ほど電話依頼が続きましたが、その後数日はない状態が続きました。
しかし、休みが明けたある日、一人で私のところへやってきました。

A君「お母さんに電話して…」
私「そうか、ちょっぴり淋しくなったの?」
そう言いながらいつものように芝居電話をすると、A君は納得して戻っていきました。

2日後、A君のいるクラスに行ったときのことです。私の顔を見たA君は
A君「園長先生おはよう!もう電話しなくてもいいよ!」
私「もう泣くのはさよならしたの?」
A君「うん!もういいの」
A君はにこにこ顔で遊び出しました。

その後も電話依頼は全くなく、クラスのおともだちとも元気に遊び、「おはよう」とにこにこした表情を浮かべながら声をかけてくれます。

 私の芝居電話を信じ、泣かないで先生たちの話をちゃんと聞いていればお母さんが迎えに来てくれるという事実を実際に体験し、理解して今のA君があると思います。 これも自立への一歩ではないでしょうか?

園長先生からA君にたくさんの拍手を送りたいと思います。
これからも明るく元気のある、心のつよい男の子に育っていきますように。

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